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赤ちゃんにむし歯がうつる?? シリーズ その2~妊婦さんの実態調査~  

むし歯を防ぐために、むし歯菌が万が一子どもの口にうつっても定着しにくいむし歯菌(ローリスク)に変えてしまうにはどうすればよいでしょうか?
その手始めとしてまず、妊娠中の女性を対象にむし歯菌についての実態調査をしました。

実態調査について
むし歯菌の『質』を知るには、母親のミュータンス菌数がポイントになります。
調査対象は産婦人科医院を受診した妊娠3~6か月目の妊婦400名です。

調査項目
1. デントカルトSM(唾液中のミュータンス菌数を調べる検査)
2. 食事調査
3. 喫煙習慣と歯科受診状況の調査
4. ガム、タブレット、歯みがき剤、洗口剤の使用状況

1. デントカルトSMの結果について
妊婦さんの唾液を検査し、1:むし歯の量、2:むし歯菌が出す酸を唾液が中和できる能力、の2つを調べました。
その結果は以下の通りでした。
 デントカルトSMの結果
(仲井雪絵:「マイナス1歳」からはじめるむし歯予防. 35頁、2011.(株)オーラルケア)

むし歯のリスクが最も低いリスク0の人は8.5%、リスク1の人は35.3%、リスク2の人は38%、リスク3の人は18.3%でした。妊婦さんの半数以上56.3%がハイリスク(リスク2とリスク3)でした。

2. 食事検査の結果について
ミュータンス菌数に関係ある食品は「アイス・シャーベット」、「ドーナツ」、「クッキー」、「チョコレート」、中程度のものは「シリアル(無糖)」でした。

3-1. 喫煙とむし歯菌数について
喫煙習慣のある妊婦さんは8.8%でした。そして、喫煙習慣のある妊婦さんはミュータンス菌数が多い傾向にありました。その他の研究結果から以下のことが考えられます。
1. タバコに含まれるニコチンはミュータンス菌を増殖させる
2. 間接喫煙により血清中のビタミンCが減少し、ミュータンス菌が増殖する
3. 間接喫煙により、唾液のもつ酸を中和する働きや自浄作用(口腔内の汚れを唾液が流す働き)が低下する
4. 喫煙をする母親は、むし歯菌の母子感染を起こしやすい行動が多い

3-2. 現在の歯科受診状況の調査について
「現在、歯科医院を受診中である」と答えた妊婦さんは全体の7.8%でした。受診内容は「むし歯の治療」が41.9%、「予防」が29%、「その他」が19.4%、「歯周病の治療」が6.5%、「歯の神経の治療」が3.2%でした。
 現在の歯科受診状況の調査
(仲井雪絵:「マイナス1歳」からはじめるむし歯予防. 35頁、2011.(株)オーラルケア)

ここまでの結果から、半数以上の妊婦さんがハイリスクであるにも関わらず、歯科医院受診中だった妊婦さんは1割未満で、しかも予防を目的とした人はその中の約3分の1以下でした。

4. ガム、タブレット、歯みがき剤、洗口剤の使用状況について
口腔衛生に役立つ製品の使用状況を調査したところ、チューイングガムは48.6%、歯みがき剤は99.4%で過去1か月に使用したことがありました。しかし、タブレット(9.2%)や洗口剤(8.3%)はあまり使用されていませんでした。

妊婦の実態調査で分かったこと
1. むし歯の発生がハイリスクを示した人は半数以上だったにも関わらず、歯科医院受診中の者は1割未満であった。
2. 歯科受診中の妊婦の中で、受診目的が「予防」であった者は3分の1未満であった。
3. 喫煙習慣はハイリスクにする。
4. 妊婦さんにキシリトールやフッ化物を利用してもらうには「タブレット」や「洗口剤」よりも「チューイングガム」や「歯みがき剤」のほうが受け入れられやすい。


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