院長の一言... 「アライナー矯正の理解と心構え その2」
アライナー矯正についての最近の記事に次のようなことが書かれていました。
アライナー矯正の需要は伸びており、日本の市場は世界のトップ5に入る。一方で、安易に開始してトラブルとなっている事例も増加しており、歯科医師会や学会への問い合わせが絶えない。そのためアライナー矯正の特質を理解しておく必要があります。
この矯正治療はあらかじめ歯をどのように移動すればいいのかをコンピューターで予測し、それに基づき模型を作製、それを使ってマウスピースを作製します。
今までのさまざまな研究から、予測した歯の移動と実際の状態とを比較した「予測実現性」という数値が発表されています。それによると、実現性の高い順から歯の遠心移動(後ろに動かす)が85%、傾斜移動が82%、側方拡大が70%、捻転(回転)が62%、トルク(歯根の移動)が40%、挺出(歯を伸ばす)が30%で平均は60%でした。残念ながら100%近くの歯の移動は困難ということです。
現状でのアライナー矯正の適応症は抜歯をしない軽度な乱ぐい歯(叢生)や出っ歯(上顎前突)、受け口(反対咬合)、すきっ歯(空隙歯列弓)です。抜歯や厳密な大臼歯のコントロールを必要とされる重度の叢生、上顎前突、反対咬合、開咬などは適応症ではありません。
アライナー矯正にするかどうかを判断する場合は透明なマウスピースで目立たないし、取りはずしができるので楽そうな治療ということだけで決めてはいけません。
自分の状態が適応症なのか、それを正しく診断することのできる担当医は十分な矯正治療の知識と技量、経験を持っている歯科医師なのか、そして数年にわたり正確に歯が動くための時間マウスピースを装着し続ける意志を持っているのか、などを考えてみてください。
令和7月3月のある日
comments