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2019年6月11日

先日、大学の同窓会があり、久しぶりに先輩、後輩の先生達とお酒を酌み交わし、楽しい話に盛り上がりました。その時に聞いた話を一つ。

歯科で扱う最も多い病気のむし歯が年々少なくなり、口の衛生状態が改善されてきています。歯科医師会で提唱した8020運動(自分の歯が80歳で20本)も予想より早く達成されるようで、自分の歯で美味しく食事のできる高齢者が増えています。

ところが、そのような高齢者が認知症になると普段のように自分で歯を上手に磨くことができなくなってしまいます。
そのため急激にむし歯が増え、20本以上もの歯を抜歯せざるを得なくなったとのこと。

認知症の老人を多く世話する施設に働く介護士さんの中には入れ歯の清掃よりも沢山残っている歯の清掃のほうが大変だ、と迷惑がっている場合もあるそうです。

高齢化社会を迎え、認知症などで歯みがきができなくなってしまった場合のことまで予想することは難しいことでした。
歯科医療はこの新たな難問を解決すべくさらに一層の努力をしなければならないと思います。

令和元年6月のある日

2019年5月 9日

四月から新学期が始まり、子供たちは新しい教室で新しい友達や先生に出会い、新しい教科書で勉強を始めています。

身体検査や検診が行われる季節でもあります。
開業以来、歯科医師会のお手伝いで毎年、歯科検診をしています。

卒業直後の数十年前に検診で診た生徒と最近の生徒とではむし歯の本数が驚異的に減少しています。

学校保健統計調査の結果では12歳兒の一人当たりむし歯本数は徐々に減少し、昨年は一本を切っていました。歯を大切にする健康習慣が普及した結果だと思います。

もう一つ、個人的に気になっているのが歯の生え替わりです。
小学校の6~12歳の間はちょうど乳歯から永久歯へ歯が交換する時期に当たります。

少人数の小学校を担当しているので、1年生から6年生まで一人で検診します。

それによると、生え替わる歯の順番は多様で、同じ学年でも生え替わりの個人差は結構あることが分かります。
さらに、背の高い子の方が低い子よりも生え替わりが早いように感じます。

最近の研究でも歯の成熟とBMI(体格指数)との関連を指摘していました。一度、詳しく調査すると面白いことが分かりそうな予感がします。

令和元年年5月のある日

2019年3月22日

矯正治療で歯を動かした後、装置をはずしたままにすると動かした歯は元の位置へ戻ってしまいます。

これを「後戻り」と呼んでいます。
この後戻りはどうして起きるのでしょうか?

①歯並びや歯の位置、機能的なかみ合わせの変化
②歯周組織や歯肉の改造現象
③神経筋系の変化
④継続する成長
⑤抜歯などの治療方法

などが挙げられています。
その中でも②が有力な原因と考えられています。

それでは後戻りについての最新の研究報告(AJODO155(2))をご紹介します。

矯正治療しない人達、治療後リテーナー(後戻り防止装置)を2~3年使った人達と使わなかった人達の治療6~12年後、の三グループでの下の前歯の凹凸を比較しました。

その結果、治療した人達としなかった人達の下の前歯の凸凹は同じでした。

しかも、リテーナーを使った人と使わなかった人に違いはなかった。このことから、下の前歯は矯正治療をしてもしなくても同じ凸凹が起きていた。

前者を後戻り、後者を加齢現象と言います。さらに、リテーナーを一時的に使っても後戻りの防止効果はなく、できるだけ長期間使うべきと結論していました。

平成31年3月のある日

2019年1月28日

先日、ある機会に次の記事を目にしました。

「・・・矯正を終えて三年経った今でも動悸と倦怠感があり、日常生活に支障を来たしています。・・・リテーナーをハメると更に動悸と倦怠感が強まり、・・・特に上顎前歯の根本がムズムズします。」

矯正専門医が矯正治療したにもかかわらず、動悸などが起き、歯に違和感を感じる、とのこと。

これと同様に、歯やアゴの違和感の訴えがあり、診査をしても客観的な異常が見当たらない。
簡単な治療では改善せず、しまいには歯の神経を取ったり抜歯したにもかかわらず違和感が改善しない、ということがしばしばあります。
これらは「難症例」であり、今まで「不定愁訴」と呼んでいました。

最近の歯科医学の発展により、これらは咬合違和感症候群、phantom bite syndrome、Medically Unexplained Oral Symptoms(MUOS)などと命名されるようになりました。

これらの原因は歯やかみ合わせではなく、精神疾患や中枢・末梢神経系の情報伝達異常などが考えられ、一般の歯科治療ではかえって症状を悪化させることがあり、心理療法や薬物療法など心身医学的なアプローチが必要であると指摘されています。

平成31年1月のある日

2018年12月 3日

私事で二か月「院長一言」をお休みしました。今月から再開です。

最近の医療ではEvidence-based Medicine(EBM)という言葉がよく使われます。
EBMとは「臨床研究によるエビデンス(科学的事実)、医療者の専門性・経験と患者の価値観の3要素を統合し、より良い患者ケアのための意思決定を行うもの」(中山健夫)
ということです。

そのエビデンスの妥当性は五段階(エビデンスレベル)に分けられ、そのトップがシステマティックレビューです。

2015年にアライナー型装置に関するシステマティックレビューが学術雑誌に発表されましたので紹介します。

2000~2014年間に発表された多数の論文の中から7編が選ばれました。
それによると、アライナー型矯正装置は、

 ①歯の圧下(下げる)量は0.72mm程度、
 ②前歯の挺出(上げる)や回転、特に丸い歯の回転は非常に困難、
 ③上顎大臼歯の歯体移動による遠心(後ろ)移動は1.5mmまで、
 ④前歯の4~5mmまでの凸凹は改善可能、と述べられています。

結論として、マルチブラケット措置に比べ適応範囲が限定される装置なので、それを十分に理解することが大切です。

平成30年12月のある日

2018年9月30日

前回は矯正力の分布について考えてみました。
今回はいよいよ最後の要素「力の継続時間」についてマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較します。

力の継続時間とは、力を歯にどのくらい連続して加えるのかと言うことです。歯に加える時間という観点から矯正装置には連続した力を加える装置と断続的な力を加える装置の二種類があります。

前者の代表がマルチブラケット装置です。この装置は取り外しが簡単にできないので、歯にはほぼ休みなく力が加わっています。それにより、歯が動くための周囲の骨などの組織変化が連続して起きていることになります。

したがって、装置が壊れたりしない限りはそれによる治療効果が確実に現れることになりなります。マルチブラケット装置が広く使われる大きな理由の一つです。

それに対し、アライナー型装置は取り外しが容易なため、力が歯に加わったり切れたり、さらに加わる時間も長くなったり短くなったりと不規則で断続的になってしまいます。

そのため、歯の動きは不連続で、治療効果の確実性は低くなります。
まさに患者さんの誠実さと根気強さに依存しているのです。

平成30年9月のある日

2018年8月31日

 前回は矯正力の方向について考えてみました。今回は第三の要素である「力の分布」についてマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較します。

力の分布とは少々想像しにくいでしょう。矯正治療で歯を動かすためには歯に力を加えることが必要です。その加え方の違いによって歯は傾斜して動いたり平行に動いたりします。

学問的に言うと、力を歯根周囲にある歯根膜にどのように分布させるかによって傾斜するか平行に動くかが決まります。これを力の分布と言います。

マルチブラケット装置で歯を傾斜させるにはブラケットの位置や形状を考慮し、アーチワイヤーの細いものや柔らかいものを使います。ワイヤーを屈曲することもあります。

平行に動かすには同じくブラケットの形状を考慮し、ワイヤーの太いものや硬いものを選んだり、ワイヤーを屈曲したりします。専門的な知識・技術が必要です。

アライナー型矯正装置自体には力の分布を調整する機構を備えてはいません。あらかじめ技工所で作製される予測模型上の歯の位置が傾斜するか平行に動くかを決めています。
予測模型しだいということです。

平成30年8月のある日

2018年7月23日

 前回は矯正力の大きさの要素について考えました。今回は第二の要素である「力の方向」についてマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較します。

矯正治療は歯を三次元に動かしますが、歯に加える力の方向が歯の動く方向となります。
マルチブラケット装置では力の方向を主に三つの方法で調節します。

第一はワイヤーの屈曲です。これをワイヤーベンディングと言い、1st、2nd、3rdオーダーベンドがあります。そのほかにも様々な形に屈曲することで力の方向を調節します。

第二は歯に装着するブラケットの位置を変えることです。

第三はワイヤーを挿入するブラケットの溝(スロットといいます)の形状を変えること。太さや角度の違ったスロットを持つブラケットが作られており、それらを適切に選択することが必要になります。

アライナー型矯正装置ではあらかじめ動かそうとする歯の位置を想定した模型を技工所で製作し、それを基に装置を作ります。作った装置を動く前の実際の歯に装着することで方向が決まります。このような製作工程なので、歯科医自身が歯を動かす量や方向を適時に調節することはきわめて困難です。

平成30年7月のある日

2018年6月29日

今回は歯を動かす時に必ず必要な矯正力の「大きさ」の点について、通常使われるマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較してみます。

マルチブラケット装置は力の大きさを次のようにいろいろコントロールできます。

第一はブラケットに挿入するアーチワイヤー。
ワイヤーには断面の太さが十種類以上あり、断面の形も円形から四角まで三種類あります。金属の種類もニッケル・チタン合金やステンレススチールなど数種類あります。
さらに、ワイヤーをいろいろ曲げることでも力の大きさをコントロールできます。

第二は豊富な付属品の種類。太さや大きさのちがう輪ゴム、エラスティックチェインやスレッド、スプリングなど。

第三はブラケットにワイヤーを固定する結紮方法にもいろいろあります。

これらを自在に組み合わせることによって必要で十分な矯正力を歯に加えることができます。

それに対して、アライナー型矯正装置は製作する材料が2~3種類と限られ、しかも一つの装置には一つの材料でしか作れないため、マルチブラケット装置のようなハイブリッド的な力の大きさのコントロールはできません。 

平成30年6月のある日

2018年5月28日

矯正装置で歯を動かすためには装置が発生する矯正力を歯に加える必要があります。その力が歯と接触する骨に圧力として伝わります。圧力が加わった骨の部分に破骨細胞が出現し、骨が徐々に吸収されます。その吸収された部分に歯が移動します。

このような訳で、矯正治療にとって歯に加える力をコントロールすることは治療の経過やその結果を左右する非常に大切なものです。前回は力のコントロールを考える上で重要な4つの要素、①力の大きさ、②力の方向、③力の分布、④力の時間を挙げました。

従来のマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較して、これら4つの要素にそれぞれどの様な違いがあるのかを考えてみます。

まず一番目の「力の大きさ」について考えます。矯正治療で取り扱う力(荷重)は50~200グラム程度です。食べ物を噛む力が数十キロあるのに比べると、とても弱い力です。そして、この力の大きさは歯の歯根が接触する骨の面積によって異なります。面積が大きいほど、すなわち歯根が太かったり、長かったり、数が多ければそれだけ大きな荷重を歯に加えなければ歯は動きません。
  
平成30年5月のある日

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おびひろアート矯正歯科 院長 今井徹
おびひろアート矯正歯科
院長 今井徹

【所属学会】
日本歯科医師会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本臨床矯正歯科医会

【経歴】
1979年3月 北海道大学歯学部卒業
1983年3月 北海道大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)
1983年4月 北海道大学歯学部助手
1985年3月 北海道大学歯学部附属病院講師
1990年7月 日本矯正歯科学会認定医
1991年5月 文部省在外研究員としてアメリカ留学
1991年11月 北海道大学歯学部講師
1992年9月 日本矯正歯科学会指導医
1993年4月 北海道大学助教授
2000年8月 おびひろアート矯正歯科を開業
2006年11月 日本矯正歯科学会専門医