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2024年2月 5日

矯正治療ではレントゲン写真を頻繁に撮影します。
矯正治療で撮影する主なレントゲン写真は顔を写すセファロ写真と歯を写すオルソパントモ写真で、診査や診断にとって必須な写真です。

先日、ある男子の患者さんのオルソパントモ写真を撮りました。それを見て大変ビックリしました。その写真には実際に生えている歯以外に少なくとも3本の歯が写っていました。右上の中切歯と側切歯の間に1本、左上の側切歯と犬歯の間に1本、そして右下の側切歯と犬歯の間に1本、歯の形そっくりなものが写っているのです。

もちろん、患者さんの歯型と照らし合わせながら何度も見返しましたが、写真には間違いなく歯らしきものがあるのです。しかも、歪んでたり、ブレたり、ぼやけたりすることなく、隣の歯と並んで生えているように写っているのです。スタッフにも見せましたが同じように見えていたので、私の目のせいではないようです。

撮影機械のメーカーにさっそく伝え点検してもらいました。来られた方も今までこのような写真は見たことはないとのことで、本社の専門家に問い合わせていました。いろいろ検討したところ、機械の問題ではなく、患者さんの顔の動きによるものではないかとのこと。パントモ写真は顔の周りをX線官とフィルムとが回転しながら撮影されます。その時に顔がブレると像は歪みますが、今回はそのような像ではないため、顔が短い時間にX線菅と同じ方向に動いたことにより、隣の歯と同じ形の歯が並んで生えているように写されたのではないか、との推論でした。ただし、専門家の方も今までこのような写真を見たことはないとのことでした。

なんとも不思議な臨床経験をしましたが、世の中にはまだまだ知られていないことが起きるようです。

令和6年1月のある日

2023年12月28日

二年ほど前から少しずつ物が見えづらくなっていました。眼科で診てもらったところ「白内障」と診断され、目薬を一日に三回点眼していました。担当の先生には「良くはなりませんが、進行を遅くするためです」と言われていました。

今年になってさらに見えづらくなり、目を細くしたり、近くに顔を寄せてみたりするようになっていました。今まで幸いなことに眼鏡のお世話にはなったことがなかったのですが、いよいよこれは駄目かなと覚悟して久しぶりに眼科を受診した。

視力検査をしたところ右目は0.7,左目は0.3で、以前は1.0と0.8だったのが悪化していました。詳しく診察していただいたところ白内障が進んだためで、近視や遠視ではないとのことでした。このままでは免許更新が通らないと言われたので、決心をして手術を受けることにしました。

通常は片目ずつ一週間おきに行うのですが、先生のご厚意で間隔を短縮していただき、手術五日後に職場復帰ができました。レンズに慣れるまで一年ほどかかるそうですが、眼帯を外した直後から物が明るく良く見えるようになりました。視力検査では両目とも1.0と以前の状態に戻りました。担当の先生から「驚異的な回復で、百歳まで保ちますよ」と励まされました。嬉しい限りでした。

人は五感、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚があり、どれも普段の生活には欠かせない感覚です。歯科医療の仕事も同じですが、中でも特に視覚は最も重要な感覚です。矯正歯科の場合、口の中の歯や歯肉を診たり、矯正装置を調整したりと細かな作業をする場合には注意深く見ながら進めなければなりません。視覚が低下するとそのような作業がしづらくなってしまいます。目は大切な器官の一つだと改めて実感しました。

令和5年12月のある日

2023年11月27日

11月1~3日新潟市で日本矯正歯科学会の学術大会があり、参加してきました。
この学会の大会は年に一度、秋に行われています。今年はコロナ開けと言うこともあり、沢山の参加者でした。例年、国内外からの先生による講演やセミナー、学術発表があり、矯正歯科では国内最大の学術大会です。

海外講演の一つにコネチカット大学(米国)の名誉教授であるRavindra Nanda先生の講演がありました。講演の趣旨は「科学的根拠に基づく矯正歯科治療を行うことが重要である」ということで、いろいろな事例をお話されました。

矯正歯科治療は年単位の長期にわたる一連の歯科治療です。
長期間の治療になる理由の一つに、歯を安全に動かすためにはゆっくりと時間をかけなければならないことがあります。
一般的に使われているマルチブラケット装置では通常月に一度の通院間隔で、その間に歯が移動する距離は1 mm程度です。そのため平均2~3年の治療期間が必要になります。
歯の移動が早くなれば治療期間の短縮に結びつくので、その目的でいろいろな研究や器械が発表されています。

歯を早く移動させる方法の一つとして歯に微振動を加えるという方法が提唱され、実際にハンディな振動器械が海外で販売されました。一流の学術雑誌にもその振動器械の広告が出ていました。

ところがその後、この器械を使用した実験がいくつか発表され、歯の微振動には歯の移動の促進させる効果がないことが明らかになりました。後日談として、器械を販売した会社は大儲けをした後、販売を中止したとのことでした。
「矯正治療の新しい装置を販売するには、その前に十分な臨床実験を行って検証しなければならない」とNanda先生は力説していました。

令和5年11月のある日

2023年10月27日

先月14日、歯科医師として初めて「集団的個別指導」というものを受けてきました。
保険診療を行う医師や歯科医師は保険診療の正しいあり方や保険点数改正について厚生局の開催する「集団指導」を受講し、適切な情報を取得することが義務づけられています。
今までに数回、受講していました。今回はそれと全く違っていました。

当日、開催会場である会議室に入ると主催者側の役員の方が数名座っていて、受講者は十数人しかいませんでした。この状況で何となく事の重大さ、深刻さを感じ始めました。

この集団的個別指導は今までの集団指導とは違います。まず、その対象者は保険請求が平均請求点数よりも高いこと、今までに個別指導を受けたことが無いものということでした。その目的は今まで通りに保険請求を続けるとさらに厳しい「指導」や「監査」を受けることになるとの警告ということと解釈しています。

矯正歯科の中には保険診療が適応となる場合があります。一つは重度の不正咬合である「顎変形症」に対する外科手術を伴う矯正治療。もう一つは厚労大臣が認める61疾患の先天異常、例えばダウン症や唇顎口蓋裂などの矯正治療です。
矯正歯科の保険点数は一般歯科に比べて点数が高い場合が多いため、たとえ来院日数が少なくても月毎の保険請求では点数が高くなってしまうことがあります。当院でも数は少ないですがこれらの保険診療を行っていますので、このことが対象となった理由ではないかと思っています。

いずれにしても、さらなる指導の対象にならないように今までに行ってきた保険診療をしっかりと見直し、請求内容や保険カルテ、必要な書類などの適切な整備を行う作業を進めていきたいと思っています。

令和5年10月のある日

2023年9月28日

先月は新しい知識を得る方法として学会や講習会、テキストブックなどを挙げました。今回はもう一つの学術雑誌について話します。

歯科矯正学や矯正歯科臨床に関して国際的にもっとも権威があり、長い歴史を持っている雑誌が二つあります。
一つはAmerican Journal of Orthodontics & Dentofacial Orthopedics、略してAJO-DOで今年で164巻を数え、毎月刊行されています。
もう一つはThe Angle Orthodontist、略してAOで今年で93巻になり、こちらは隔月の刊行になっています。
どちらの雑誌も毎回、十数編の論文が掲載されているので、それらを読むと最新の知見やこれからの研究や臨床の方向や情報などを知ることができます。そのため、世界中の多くの矯正専門医がこれらの雑誌を読んで研鑽しています。

数十年前、大学の医局に入局した頃はほとんどの医局員が個人購読を行っていました。
毎週行われる医局会ではこの二つの雑誌から面白そうな論文を選び出し、担当の先生が内容をまとめて発表し、みんなで議論すると言う抄読会を行っていました。
このような活動を通じて新しい研究を知るばかりではなく、論文とはどのように構成されているのか、何を書かなければならなのか、そしてさまざまデータをどのように処理したらいいのかなど、駆け出しの研究者にとってはとても勉強になった時間でした。

今も続けて読んでいますが、大概はAbstractを読む程度で、よほど興味があった場合に全文を読んだりしています。
最近分かったことですが、AOの雑誌は有料購読しなくてもネットで無料で読むことができるようになっていました。しかも、瞬時に和訳もしてくれるという大変有り難い機能もついています。インターネットやAIの進化にはつくづく驚かされます。

令和5年9月のある日

2023年8月28日

どのような分野もみな同じだと思いますが、学問や研究は常に進歩を続けています。
矯正治療に深く関係する歯科矯正学の分野も日々新しい課題や知見が発表されています。
それらすべてが明日の診療に必ず役立つものである、というとそうではありません。けれども近い将来、役に立つ場合が多いことはよく経験することです。

開業医は毎日の診療が仕事なので、研究や教育機関で聴講することは難しいです。
そのため、新しい知識を得る手段の一つは学会や学術セミナー、講演会などに出席して勉強することです。学会は年に数回開催され、そこで講演や研究発表、症例供覧などを見聞きしています。そうすることで期待していたことのほかにも、考えてもいなかった刺激を受けたりもします。

コロナパンデミック前には毎年開催されていた矯正治療の講演会に私は毎年参加していました。世界的に著名なアメリカの矯正専門医で、マルチブラケット装置の最新治療法と言われているシステムを構築されたマクロフリン先生の講演会です。
参加する度に日常の治療で役立つことを学び、新たな意欲を沸かせられていました。
残念ながら、今のところ開催の通知はありません。早く再開してほしいと思っています。

勉強するもう一つの方法は発刊されているテキストブックや定期刊行されている学術雑誌を購読することです。
テキストブックは非常に充実した内容のものが海外で多く出版されています。
先ほどのマクロフリン先生の著書はすでに6冊以上出版されています。また、成長期の矯正治療である早期治療の本も数多く出版されており、最近では800ページ以上もの分厚い大著が出版されました。
英語という難敵に挑戦している日々です。

令和5年8月のある日

2023年7月27日

5月の「院長一言」でお話ししました発音障害の続きで今回は「滑舌が悪い」ことについて考えてみたいと思います。

患者さんに「何か話しづらいことや聞き取られづらいことはありますか?」と質問すると、前回取り上げたように「サシスセソが言いづらい」とか「タチツテトが言いづらい」ということをよく聞きました。ところが最近は「ある特定の発音がしづらいということではないが、全体に滑舌が良くない」と答える患者さんが増えている気がしています。

私は大学院の研究テーマとして「不正咬合と発音障害」を勉強しました。数十年前の当時には構音(発音)障害に「滑舌が悪い」という現象は含まれてはおらず、そのような「構音障害」の種類はなかったように思います。

一般に構音障害とは声が出ない、はっきりと発音できない、特定の音が出ない、舌がもつれる、ろれつが回らない、などがあります。「滑舌が悪い」と感じている方は構音障害の中の後者の二つについて言っているのかもしれません。

また「滑舌」とは「言葉を明確に発音する口や舌の動き」とあり、滑舌が悪くなる原因として「舌や口の周囲の筋肉が硬くなり、動きが悪くなること」とあります。この口や唇などの筋肉の動きや舌の運動を障害させている原因として出っ歯(上顎前突)や口ゴボ(上下顎前突)、乱ぐい歯(叢生)などの不正咬合が関与している可能性は考えられます。

ただ矯正検査でアゴの運動や咀しゃく筋、舌の動きを診査するのですが、それらの動きに異常を認める場合は極めて少なく、滑舌が悪い状態を客観的に評価することが難しいのが現状です。
一つ考えられることは、不正咬合の障害で最も多い審美的な問題に起因する心理的な影響が発音や会話にも影響を及ぼしているのではないかと思います。その意味では不正咬合の改善は滑舌の改善に有効であると考えられます。

令和5年7月のある日

2023年6月29日

2月の院長一言では久しぶりの学会の現地参加として日本臨床矯正歯科医会福岡大会への参加をお話ししました。今月は地元の北海道矯正歯科学会への対面参加についてお話しします。

私たち矯正歯科医が主に入会して活動する学会は第一が日本矯正歯科学会(日矯)、その次が地方の矯正歯科学会で日矯の協力学会と言います。地方の矯正歯科学会には北は北海道矯正歯科学会から南は九州矯正歯科学会まで全国に七つあり、自分の診療所のある都道府県によって入会する学会が違っています。私は北海道なので北海道矯正歯科学会に入会しています。

2019年からWeb開催を続けていましたが、今年は三年ぶりに現地参加をメインに開催しました。そのためか百名を超える参加者で会場が埋まり、久しぶりに会う先輩や後輩などと話をする光景があちこちに見られました。私もその一人で、いろんな人に久しぶりに再会できたことで参加して良かったと強く感じました。

学会は学問の進歩発展と国民の口腔衛生の向上に寄与することが目的で、そのためにさまざまな分野の研究発表や著名な先生の講演、そして治療症例の供覧などが行われます。それらは日々の仕事に役立つ知識や技術、また将来の進むべき方向を教えてくれる有益な内容が含まれています。

学会が持つもう一つの大事な面は会員同士のコミュニケーションの場なのです。その内容は多岐に渡ります。仕事のことで日頃なかなか人には聞けない事や聞いたことがないこと、自分の考えが正しいのかなど。仕事以外では健康や生活の悩み、知人の状況など。学会は大切な団体なのです。

令和5年6月のある日

2023年5月25日

不正咬合(歯並びやかみ合わせの異常)によりさまざまな不都合が起こっています。その一つに発音障害があります。初診時の矯正相談で患者さんから「発音がしづらい」とか「滑舌が悪い」とかの訴えをよく聞きます。発音障害は不正咬合と深く関連があります。

「どの言葉が発音しづらいですか?」と質問すると、「サシスセソ、サ行が話しづらい」と答えることが多いです。それには理由があるのです。
私達が発音をする場合には調音方法と調音点という2つの重要な動きを口で巧みに行っています。調音方法には上と下の唇で吸気を破裂させて作る破裂音「パピプペポ」や上と下の前歯で吸気を摩擦させて作る摩擦音「サシスセソ」などがあります。調音点とは破裂音では上と下の唇、摩擦音では上と下の前歯のことをいいます。
これらの動作を瞬時にしかも連続して行なうことによっておしゃべりをしているのです。これら調音方法のやり方や調音点の構造に異常があると発音障害が起こってしまいます。

不正咬合で頻度が多いものに出っ歯(上顎前突)と受け口(反対咬合)があります。
出っ歯の場合は上の前歯が下の前歯よりも前に、受け口の場合は逆に後ろになっていて、どちらの場合も正常なかみ合わせよりも上と下の前歯が離れてしまっています。
それによって上と下の前歯で吸気をうまく摩擦させることができなくなっているのです。出っ歯や受け口の場合にもっとも発音しづらい言葉が摩擦音「サシスセソ」になっているのはそのためなのです。しかも、それでも何とかそれらしい音を作ろうと無意識ながら工夫をしているのです。その工夫として舌を使って音を作っていることが多く、そのために不自然な摩擦音になってしまっています。これが不正咬合による発音障害の理由です。

この科学的解明は1991年に北海道大学歯学部歯科矯正学講座の山本隆昭博士によって行われました。

令和5年5月のある日

2023年4月27日

ここ数年、病院や患者さんから「MRIの検査をするので矯正装置を外してください」とか「MRIの検査をするのですが矯正装置はどうすればよろしいですか?」との依頼や問い合わせが多くなっています。この件に関する歯科医師会や学会からのガイドラインが見当たらず、困っていました。大学の先生に相談したところ有益な論文を紹介していただいたのでご紹介します。

BMC Oral Healthという学術雑誌に2022年発表された「MRI compatibility of orthodontic brackets and wires: systematic review article」という論文で口腔診断学の先生が書かれたものです。この論文は今までに発表されたMRIと矯正装置に関する多くの論文を集め、その中から有用な研究結果と判断された18の論文の研究結果をまとめたものになっています。

これによると、MRIが矯正装置に与える影響は①装置の発熱、②装置の脱落、③画像への影響(アーチファクト)の三つです。今までのさまざまな研究報告から発熱や脱落はほとんど問題がなく、必要であれば装置と口腔粘膜との間にスペーサーを挿入することで防止することが可能です。

問題となるのは三番目の画像への影響、アーチファクトです。MRIの撮像部位や装置の材料にもよるのですが、金属は撮像された画像に歪みを生じさせてしまうことがあると指摘されています。具体的には、撮像部位が頭部や首の場合でステンレススチールやNi-Ti製のブラケットやワイヤーなどを装着していた場合は装置を一時撤去するべきであると指摘しております。首より下のそのほかの撮像部位の場合は装置を撤去する必要はないとも述べられています。

この論文を教えられてからは、当院では基本的にこのガイドラインに従って対応することにしています。

令和5年4月のある日

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おびひろアート矯正歯科 院長 今井徹
おびひろアート矯正歯科
院長 今井徹

【所属学会】
日本歯科医師会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本臨床矯正歯科医会

【経歴】
1979年3月 北海道大学歯学部卒業
1983年3月 北海道大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)
1983年4月 北海道大学歯学部助手
1985年3月 北海道大学歯学部附属病院講師
1990年7月 日本矯正歯科学会認定医
1991年5月 文部省在外研究員としてアメリカ留学
1991年11月 北海道大学歯学部講師
1992年9月 日本矯正歯科学会指導医
1993年4月 北海道大学助教授
2000年8月 おびひろアート矯正歯科を開業
2006年11月 日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)