院長の一言... 「不正咬合による発音障害 その2」
5月の「院長一言」でお話ししました発音障害の続きで今回は「滑舌が悪い」ことについて考えてみたいと思います。
患者さんに「何か話しづらいことや聞き取られづらいことはありますか?」と質問すると、前回取り上げたように「サシスセソが言いづらい」とか「タチツテトが言いづらい」ということをよく聞きました。ところが最近は「ある特定の発音がしづらいということではないが、全体に滑舌が良くない」と答える患者さんが増えている気がしています。
私は大学院の研究テーマとして「不正咬合と発音障害」を勉強しました。数十年前の当時には構音(発音)障害に「滑舌が悪い」という現象は含まれてはおらず、そのような「構音障害」の種類はなかったように思います。
一般に構音障害とは声が出ない、はっきりと発音できない、特定の音が出ない、舌がもつれる、ろれつが回らない、などがあります。「滑舌が悪い」と感じている方は構音障害の中の後者の二つについて言っているのかもしれません。
また「滑舌」とは「言葉を明確に発音する口や舌の動き」とあり、滑舌が悪くなる原因として「舌や口の周囲の筋肉が硬くなり、動きが悪くなること」とあります。この口や唇などの筋肉の動きや舌の運動を障害させている原因として出っ歯(上顎前突)や口ゴボ(上下顎前突)、乱ぐい歯(叢生)などの不正咬合が関与している可能性は考えられます。
ただ矯正検査でアゴの運動や咀しゃく筋、舌の動きを診査するのですが、それらの動きに異常を認める場合は極めて少なく、滑舌が悪い状態を客観的に評価することが難しいのが現状です。
一つ考えられることは、不正咬合の障害で最も多い審美的な問題に起因する心理的な影響が発音や会話にも影響を及ぼしているのではないかと思います。その意味では不正咬合の改善は滑舌の改善に有効であると考えられます。
令和5年7月のある日