院長の一言... 「日本矯正歯科学会学術大会の海外講演」
11月1~3日新潟市で日本矯正歯科学会の学術大会があり、参加してきました。
この学会の大会は年に一度、秋に行われています。今年はコロナ開けと言うこともあり、沢山の参加者でした。例年、国内外からの先生による講演やセミナー、学術発表があり、矯正歯科では国内最大の学術大会です。
海外講演の一つにコネチカット大学(米国)の名誉教授であるRavindra Nanda先生の講演がありました。講演の趣旨は「科学的根拠に基づく矯正歯科治療を行うことが重要である」ということで、いろいろな事例をお話されました。
矯正歯科治療は年単位の長期にわたる一連の歯科治療です。
長期間の治療になる理由の一つに、歯を安全に動かすためにはゆっくりと時間をかけなければならないことがあります。
一般的に使われているマルチブラケット装置では通常月に一度の通院間隔で、その間に歯が移動する距離は1 mm程度です。そのため平均2~3年の治療期間が必要になります。
歯の移動が早くなれば治療期間の短縮に結びつくので、その目的でいろいろな研究や器械が発表されています。
歯を早く移動させる方法の一つとして歯に微振動を加えるという方法が提唱され、実際にハンディな振動器械が海外で販売されました。一流の学術雑誌にもその振動器械の広告が出ていました。
ところがその後、この器械を使用した実験がいくつか発表され、歯の微振動には歯の移動の促進させる効果がないことが明らかになりました。後日談として、器械を販売した会社は大儲けをした後、販売を中止したとのことでした。
「矯正治療の新しい装置を販売するには、その前に十分な臨床実験を行って検証しなければならない」とNanda先生は力説していました。
令和5年11月のある日