院長の一言... 「アライナー矯正の理解と心構え その1」
今まさに発展途上にあり、治療を受ける患者さんが増加している「アライナー矯正」の抱える問題についてもう少し解説します。
従来のマルチブラケット装置による治療であるワイヤー矯正とアライナー矯正を歯の移動する距離と時間の点から比べてみます。
今のところアライナー矯正では歯の移動距離が短い歯を傾斜させるような移動や横幅を広げる側方拡大の治療にアライナー矯正は適しています(予測実現性 70-80%)。具体的には、すきっ歯や歯を抜かないで治せる程度の乱ぐい歯、軽度の出っ歯などです。
それに対して歯をたくさん動かさなければならないような重度の乱ぐい歯や出っ歯、受け口などは歯根を含む歯全体を長い距離動かさなければならないのでアライナー矯正では限界があり、ワイヤー矯正でなければ十分な治療効果が保証されません。
もう一つは時間です。どちらの治療でも歯を動かす生物学的反応は同じです。歯に加えられる力が歯の周囲の骨を変化させることによって歯は動いているのです。したがって、歯に加わる力が継続して長い時間に作用するほど歯は早く動きます。
ワイヤー矯正はブラケットやワイヤーが歯に固定されているため、患者さんの協力がなくてもある程度までの歯の動きは担保されます。
それに対して、アライナー矯正は取りはずしができるので、患者さん自身の努力と意欲に負うところが非常に大きくなります。
先生の指示通りにアライナーを毎日、十分な時間使っていると歯は計画通り動いてきます。しかし、使わなかったり、使う時間が短かかったりする場合には歯は動きません。
動かないばかりか、使わないと歯は元の位置に戻ってしまう「あと戻り」という現象が起こってしまいます。十分に注意が必要です。
令和7月1月のある日