院長の一言... 「第一大臼歯の自然な近心移動の利用について」
生まれながらにして何本かの永久歯が形成されないことがあり、そのような歯を先天性欠如歯と言います。発生頻度は約10%と10人に1人に起こり、非常に頻度の高い先天異常といえます。
永久歯は中切歯から智歯まで上下左右でそれぞれ8種類ありますが、その中で先天性欠如の起こりやすい歯として側切歯(前から2番目)と第二小臼歯(前から5番目)の二種類と言われています。矯正治療を含めて歯科治療を行う場合にこの欠如した部位をどのように治療したらよいのかは難しい問題の一つになります。
よく行われる先天性欠如歯の歯科治療の一つが下顎第二小臼歯の欠如で、たいていは第二乳臼歯が脱落せずに残っていることが多い。その11 mm以上もの大きなスペースをどうするかは悩むところです。
いくつかの治療方法が考えられます。一つは可及的に乳臼歯を残すこと。ただいつまで乳歯が残るのかは不確定で、脱落した場合に対応が必要になります。二つ目は乳歯を抜去して義歯やブリッジ、インプラントなど人工歯で対応すること。その場合、患者さんの年齢、歯と周囲の歯周組織の状態などを考量しなければなりません。
もう一つの方法として歯を移動することによって欠如した歯のスペースを閉鎖することです。その場合の「歯の移動」は矯正装置を使って人為的に歯を動かすことが主になってきますが、11mmものスペースを移動させるには長い時間がかかり、工夫も必要になります。
もし歯の交換期など早期に治療を始めることができる場合、第一大臼歯が自然に前に動いてくるドリフトという現象を利用することも有効な方法の一つです。適切な時期としては第二大臼歯の歯根形成が開始されてからが目安と考えられています。そのためには先天性欠如歯の早期発見が重要になってきます。
令和6年4月のある日