院長の一言... 「小児の不正咬合について」
毎年秋に日本矯正歯科学会の学術大会が開催され、今年は横浜のパシフィコ横浜が会場でした。6000千人以上の会員が所属する日本で一番大きな矯正歯科の学会なので、大きな会場が必要となります。
一昨年、学会の主導で「小児の不正咬合に関する大規模調査」という疫学調査が行われました。当院も調査に協力しました。その中間報告が発表されていましたので紹介します。
18歳以下の初診時矯正歯科患者を対象に、性別や年齢、不正咬合などの詳細を調査するもので、全国の29の大学病院や40の歯科診療所から回答が集まり、患者数は総数11.608人でした。
年齢別では6~12歳以下の小学生が70%でもっとも多く、80%が自費診療で20%が保険診療でした。大学病院の方が診療所よりも保険診療が若干多かったようです。性別では女子が57%、男子が43%で男女にそれほど差はありませんでした。
不正咬合の種類では叢生(乱ぐい歯)が37%でもっとも多く、次が上顎前突(出っ歯)の25%、下顎前突(受け口)の16%、過蓋咬合(深いかみ合わせ)の6%、開咬(上と下の歯が離れている)の3%でした。叢生は上顎前突や下顎前突の場合にも合併して生じますので、大きな比率を示しています。
叢生の次に多いのが上顎前突でした。三十年以上前の歯科矯正学の教科書には大学病院の8割近くが下顎前突であったと記載されていました。また以前は欧米では上顎前突が、日本では下顎前突の治療が多いと言われていました。ところが今回の調査では下顎前突が2割を下回っていたのに対して、上顎前突が下顎前突を上回っていました。このことは日本の矯正歯科治療が大きく変化していることの背景であると考えられます。
令和6月10月のある日