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2018年5月28日

矯正装置で歯を動かすためには装置が発生する矯正力を歯に加える必要があります。その力が歯と接触する骨に圧力として伝わります。圧力が加わった骨の部分に破骨細胞が出現し、骨が徐々に吸収されます。その吸収された部分に歯が移動します。

このような訳で、矯正治療にとって歯に加える力をコントロールすることは治療の経過やその結果を左右する非常に大切なものです。前回は力のコントロールを考える上で重要な4つの要素、①力の大きさ、②力の方向、③力の分布、④力の時間を挙げました。

従来のマルチブラケット装置とアライナー型矯正装置とを比較して、これら4つの要素にそれぞれどの様な違いがあるのかを考えてみます。

まず一番目の「力の大きさ」について考えます。矯正治療で取り扱う力(荷重)は50~200グラム程度です。食べ物を噛む力が数十キロあるのに比べると、とても弱い力です。そして、この力の大きさは歯の歯根が接触する骨の面積によって異なります。面積が大きいほど、すなわち歯根が太かったり、長かったり、数が多ければそれだけ大きな荷重を歯に加えなければ歯は動きません。
  
平成30年5月のある日

2018年4月24日

前回はアライナー型矯正装置の人気とその理由について考えてみました。
たしかに、ここしばらくはこの装置の要望は続くと思います。
ところが残念なことに、この装置で治療を受けた方々から学会への質問やクレームが多くなってきているのも現状です。
なぜなら、思ったほどには治療成果があがっていないからです。

その原因は装置自体の持つ特性にあると考えます。
矯正治療で歯を動かす場合、歯の解剖学的形態と歯を動かすのに必要な装置が発生する力(矯正力といいます)を考えなければなりません。
健康な歯はその三分の一は歯ぐきから出ていますが、残りの三分の二は歯ぐきの中の骨にしっかりと植わっています。
そのため、食べ物を噛み砕くための数十キログラムという強い力が歯に加わってもグラグラしてきたり、抜けたりしません。

そのようなガッチリの歯を人工的に動かすためには矯正力のさまざまな要素を考える必要があります。
その要素とは①力の大きさ、②力の方向、③力の分布、④力の時間の4つです。
これらの点について成人矯正でよく使われるマルチブラケット装置とアライナー型装置とを比較してみます。  

平成30年4月のある日

2018年3月27日

先日、矯正学会の先生から聞いた話ですが、学会への質問やクレームにアライナー型矯正装置のことが急増しているそうです。

アライナー型矯正装置とはインビザライン、クリアーアライナーなどと呼ばれ、透明で薄いプラスティックでできたマウスピースです。マウスピースなので取り外しは簡単で、これを2~3週間に一度新しいものに交換することで歯を動かす矯正治療を行います。東京など大都市中心部ではこの装置での治療希望者が極めて多く、矯正医もそれを使わざるを得ない状況のようです。

なぜそれほど多くなっているのでしょうか?幾つか理由を考えてみました。

まず一つは装着感。透明で薄い装置なので、歯につけていても目立たないために人目を気にすることはなく、着けた感じもほとんど違和感はありません。

二つ目は、一つのマウスピースで動かす歯の移動量は0.2~0.4 mm程度なので、歯への力の荷重が少ない.そのため、装着後の不快感や痛みも強くはありません。

三つ目は、外したい時はすぐに自分で外すことができます。そして、歯みがきも装置を外してするので口を清潔に保てます。でも、その中に大きな落とし穴があるのです。

平成30年3月のある日

2018年2月26日

矯正治療の現場から、凸凹(叢生)な歯並びを持つ子供達が右肩上がりに増えている気がします。治療を希望して受診する子供の約8割は凸凹の歯並びです。この傾向は矯正の患者さんだけではなく、小・中学校の歯科検診でも感じます。

2~3年前の3歳児健診であった実際の話です。3歳とはすべての乳歯が生えそろったばかりの頃です。受けた子供は6人と少なかったのですが、そのうち、正常な歯並びの子供は2人。前歯にすき間のまったく無い子が3人。すでに乳歯の前歯が凸凹になっている子が1人いました。永久歯の前歯は乳歯より大きいので、このままでいくと、確実に永久歯が凸凹になる割合は約7割という高い頻度が予想されます。

 これは何が原因なのでしょうか?学問的には「永久歯が大きくなっている」や「アゴの骨が小さくなっている」などと言われています。しかしながら残念なことに、それらを明確に裏付けた調査や研究はほとんどないのが現状です。聞くところによりますと、そのためのフィールドワークが企画されているようです。原因が分からなければ予防もできません。調査結果が楽しみです。   

平成30年2月のある日

2018年1月29日

質問「歯並びとむし歯って、関係あるの?」、答えは「Yes」。
これはほとんど常識で、今さら考える必要もないと思っている人はたくさんいると思います。しかし、実はそのことを科学的に研究したり、大規模調査を行ったりして論文などで発表されていることが少ないのです!

数十年前学生だった頃、歯科矯正学の教科書にも悪い歯並びはむし歯や歯周病の原因になると書いてありましたし、授業でもそう教えられました。実際の矯正治療をしていても、歯並びが良くなるにつれて、今まで凸凹で見えなかった歯の部分にむし歯ができていたりすることはよく経験します。そのようなことから、いくら一所懸命に歯磨きしても、歯並びが悪いとむし歯になってしまうことに疑問を感じたことはありませんでした。

ところが、以前むし歯の発生の危険性についての論文を作るためにその根拠となる研究を探そうとした時があるのですが、なかなか見つかりませんでした。大学の先生からも同じ苦労をしたことを聞いたことがあります。当たり前の常識はなかなかアカデミックな活動と結びつかないのでしょうか。 

平成30年1月のある日

2017年12月26日

矯正治療は治療が始まってから保定(治療後の安定をはかる段階)になるまで年単位の長い時間を必要とします。治療を効率よく進めるためにはできるだけ担当医は変わらない方がいいのです。やむをえず変わる場合は進学や通院などで通院が困難になった場合、担当医が病気や死亡で続けられなくなった場合です。なかには、担当医への信頼を無くしてしまったという場合もあります。これらを転医(てんい)と言います。

しかし、転医には煩雑な手続きが伴います。第一に治療をしてくれる次の先生を探さなければなりません。また、次の先生が円滑に治療を続けるためにはレントゲン写真や歯の模型、今までの治療経過などの情報を必要とします。それらは前の先生から提供してもらわなければなりません。第二に治療費の精算や次の先生への新たな治療費の支払が発生します。保険診療であれば問題は少ないのですが、多くの矯正治療は保険外診療なので、その取り扱いはケース・バイ・ケースが現状です。

そのため、矯正治療を始める時に矯正歯科医を正しく選択することが大変重要になります。初回の矯正相談でしっかりと話を聞くのが大切です。  

平成29年12月のある日

2017年11月27日

インターネットの世界的な普及によって私達の生活はずいぶん便利になりました。
知らない事や知りたい事があると昔は本で調べたり、人に聞いたりしました。
でも、今はネットを開くと沢山の情報が瞬時に手に入ります。矯正治療の場合もネットのホームページ(HP)を調べて来院する場合が多くなっています。
矯正歯科を行っている診療所のHPもネットに沢山載っています。
内容は住所、電話番号、矯正治療の説明、診療所の紹介やその特徴、矯正治療費、院長の経歴などです。
これらを参考にして、自分に適した診療所をいろいろと選んで来られます。

でも、HPには「どうもこれは?」と疑問になる言葉や内容が使われていることが多くなってきています。たとえば「スピード矯正」、「プチ矯正」、「ブライダル矯正」など。何となくわかる気がしますが、実際にはその様な矯正治療はありません。また、「難しい治療でも必ず成功」、「絶対安全な治療を提供」、「日本有数の実績」など虚偽や誇大と思われる表現もあります。

厚労省や学会はこれらのHPの規制強化を行い、正しい医療を理解していただくように指導しています。 

平成29年11月のある日

2017年10月28日

 先週、日本矯正歯科学会が札幌市で開催されました。北海道での開催のため移動の時間やお金の負担が軽くてすみました。そればかりでなく、宇宙望遠鏡を使った大きなスケールの画期的発見から、幹細胞を利用した先端的再生医療、そして最新の矯正治療についてと盛り沢山の講演が用意されていて、大変有意義な学会でした。

その中の一つに、著名な矯正臨床医である菅原準二先生の講演がありました。今回の講演では、ご自身の長年の臨床経験から困難な矯正治療例を通して、現代の矯正治療における三つのエポックメーキングについて解説されました。

第一はマルチブラケット装置の進歩。この装置によってほとんどの不正咬合の治療が可能になりました。第二はアゴの手術を伴う外科的矯正治療の進歩。通常の矯正治療では歯の移動量は2~5mmですが、この治療により5mm以上の歯の移動や上下のアゴ自体の移動が可能になりました。そして第三はアンカースクリューの開発。短く細いスクリューを骨に入れることで、今まで出来なかった歯の移動が可能になりました。矯正治療が確実に進化していることを丁寧に整理していただきました。 

平成29年10月のある日

2017年9月26日


先日、矯正歯科材料のセールスマンの方に面白い話を教えてもらいました。歯の表に着けるブラケットには昔からある金属製のもの(メタルブラケット)とプラスチックやセラミックでできた透明なもの(審美ブラケット)の二種類があります。日本ではメタルよりも審美ブラケットの方が好まれるので、審美ブラケットの注文数が多いということでした。お隣の韓国も近年矯正治療を受ける人が増加しており、やはり審美ブラケットを選ぶ人が多いということでした。

ところが、ブラケットによる治療の元祖である本場アメリカでは日本とは逆に審美ブラケットよりもメタルを選ぶ人が多いとのことでした。同じような傾向がシンガポールなど東南アジアでも見られるとのこと。その理由は、矯正治療を受けているということ自体が社会での立派なステータスシンボルになるからだそうです。これはアメリカでも東南アジアでも同じ理由のようです。中には、治療をしていないのにわざと歯の表面に金属を張って、いかにも治療をしているように見せている人もいるそうです。お国によって受け止め方はさまざまです。  

平成29年9月のある日

2017年8月24日


今回は「矯正治療での四つの大切なポイント」の最後、保定について話します。

矯正治療は沢山の歯を矯正装置を使って動かし、歯を正しい位置に並べます。動かし終わったら装置を外します。しかし、外したままにしておくと、歯はゆっくりと元の位置に戻ろうとします。この現象を「後戻(あともど)り」といい、もっとも大きな原因は歯と周囲の組織の構造によるもので、必ず起こります。後戻りを防ぐのが保定です。

多くの患者様は、長い時間をかけて治した綺麗な歯並びをできるだけ長く保っておきたいと望みます。その希望を保証するのが保定の役目で、治療後の安定性を左右する重要な段階となります。そのため、歯を動かす治療を動的(・・)治療(・・)というのに対して、保定を静的(・・)治療(・・)ともいいます。後戻りは動的治療後1年以内に起こる早期の後戻りと、それ以降にゆっくりと起こる晩期の後戻りがあります。
これら後戻りを防ぐ装置をリテーナー(保定装置)といいます。リテーナーには取り外し可能なタイプと歯に接着させるタイプがあります。使用時間も経過によっていろいろありますので、担当の先生の指示をしっかり守ることがとても大切です。 

平成29年8月のある日

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おびひろアート矯正歯科 院長 今井徹
おびひろアート矯正歯科
院長 今井徹

【所属学会】
日本歯科医師会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本臨床矯正歯科医会

【経歴】
1979年3月 北海道大学歯学部卒業
1983年3月 北海道大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)
1983年4月 北海道大学歯学部助手
1985年3月 北海道大学歯学部附属病院講師
1990年7月 日本矯正歯科学会認定医
1991年5月 文部省在外研究員としてアメリカ留学
1991年11月 北海道大学歯学部講師
1992年9月 日本矯正歯科学会指導医
1993年4月 北海道大学助教授
2000年8月 おびひろアート矯正歯科を開業
2006年11月 日本矯正歯科学会専門医