院長の一言... 「タバコと矯正歯科治療」
昔のことですが、お酒とタバコが似合う大人の男性はカッコ良くて、モテる男のシンボルのように扱われていました。アラン・ドロンや田宮二郎のタバコを吸う姿に憧れた人も多かったのではなでしょうか。
けれども時代は大きく変わり、科学が進歩したために、酒は適量であれば「百薬の長」と言われていますが、タバコは「百害あって一利なし」とまでに疎まれる存在になってしまいました。
タバコはその成分(ニコチン、タール、一酸化炭素、アンモニアなど)による毒性やガン誘発が指摘されています。全身的な影響としては、呼吸器では肺ガンや慢性閉塞性肺疾患、喘息など、循環器では心室肥大、収縮性心不全、脳卒中などや糖尿病などがあります。
歯科分野とも関連が深く、歯周病では喫煙者は非喫煙者に比べて骨の吸収やポケットの形成が強く起きることによって2.5~6倍も進行しやすいと指摘されています。また、骨移植やインプラントの失敗率も高いとされています。
矯正歯科とタバコとの関連についての論文がありました。動物実験ですが、それぞれ電子タバコの成分と紙巻きタバコの成分と蒸留水を与えた三つのグループで、歯の移動量と破骨細胞(骨の吸収を起こす細胞)を測定した実験でした。
その結果、歯の移動量は蒸留水群がもっとも多く、電子タバコ群はその4/5、紙巻きタバコ群は2/3でした。破骨細胞の数は蒸留水群がやはりもっとも多く、電子タバコ群はその1/2、紙巻きタバコ群は1/4でした。
このことから、矯正治療による歯の移動は喫煙者の方が非喫煙者よりもゆっくりとした歯の移動になってしまい、治療期間が長期化してしまうことが予想されます。
やはり、矯正治療でもタバコはよろしくないようです。
令和6月7月のある日