院長の一言... 「病院でのMRI撮像と矯正装置」
ここ数年、病院や患者さんから「MRIの検査をするので矯正装置を外してください」とか「MRIの検査をするのですが矯正装置はどうすればよろしいですか?」との依頼や問い合わせが多くなっています。この件に関する歯科医師会や学会からのガイドラインが見当たらず、困っていました。大学の先生に相談したところ有益な論文を紹介していただいたのでご紹介します。
BMC Oral Healthという学術雑誌に2022年発表された「MRI compatibility of orthodontic brackets and wires: systematic review article」という論文で口腔診断学の先生が書かれたものです。この論文は今までに発表されたMRIと矯正装置に関する多くの論文を集め、その中から有用な研究結果と判断された18の論文の研究結果をまとめたものになっています。
これによると、MRIが矯正装置に与える影響は①装置の発熱、②装置の脱落、③画像への影響(アーチファクト)の三つです。今までのさまざまな研究報告から発熱や脱落はほとんど問題がなく、必要であれば装置と口腔粘膜との間にスペーサーを挿入することで防止することが可能です。
問題となるのは三番目の画像への影響、アーチファクトです。MRIの撮像部位や装置の材料にもよるのですが、金属は撮像された画像に歪みを生じさせてしまうことがあると指摘されています。具体的には、撮像部位が頭部や首の場合でステンレススチールやNi-Ti製のブラケットやワイヤーなどを装着していた場合は装置を一時撤去するべきであると指摘しております。首より下のそのほかの撮像部位の場合は装置を撤去する必要はないとも述べられています。
この論文を教えられてからは、当院では基本的にこのガイドラインに従って対応することにしています。
令和5年4月のある日