院長の一言... 「上顎第一大臼歯の遠心移動装置について」
最近読んだ矯正歯科関係の本で勉強になった一冊があります。MheissenとKhanの"Orthodontic Evidence"という本で、10のテーマごとに最新の論文を集め要旨をまとめたものです。
その本の第一章が「Maxillary Molar distalization」、上顎大臼歯の遠心(後ろ方向)移動でした。このテーマが一番初めに書かれている本は今まで見たことがありません。このテーマが最近の矯正臨床でいかに重要な治療であるかを強く感じました。
当院では重度の乱ぐい歯(叢生)や出っ歯(上顎前突)の治療が増えているため、上顎大臼歯の遠心移動を行わなければならない場合が増加しています。そこでこの目的の矯正装置を調べました。
今までに発表された大臼歯遠心移動装置はヘッドギア、Carriere appliance、Celtin removable plate、Wilson bimetric distalizing arch、ペンデュラム装置、Frog appliance、マグネットを用いた装置、Distal Jet、Jones Jig、 First Class appliance、Keles slider appliance、Xbow appliance、GMDなど沢山ありました。前の四つは患者さんの協力が必要な装置で、残りはそれほど必要ありません。
治療を効率よく確実に進めたい立場としては、できるだけ患者さんへの負担が少なく、かつ意図する歯の移動が確実に、しかもほかの歯や歯肉などに副作用が生じない装置であれば大変有り難いことです。
当院ではその中の一つのDistal Jetという装置を使うことが多くなっています。作製は少々煩雑ですが、今のところ意図した歯の移動をしてくれる装置ではないかと考えています。
ただし、その治療効果を十分に導き出し、かつ効果を持続するための対応をさらに検討しなければならないと考えています。
令和6年5月のある日