院長の一言...「矯正的歯の動きを早くするアプローチ」
先月書きましたが、矯正治療の治療期間が長い理由は歯の動きが遅いことにあります。歯に矯正力を加えることで周囲の骨を吸収させたり、添加させたり(リモデリング)して歯を動かしますが、普通は一か月に1mm位しか動きません。早く歯を動かすことができれば治療期間も短くなります。そのための研究が幾つかあります。
一つは遺伝子治療です。骨のリモデリングでの骨形成因子や血管内皮増殖因子に遺伝子を導入します。動物実験では歯の移動が150%加速したという結果が報告されています。
つぎに外科的手法で皮質骨切開術、骨切除術、ピエゾ切開術などがあります。一時的に骨の代謝を増加させますが、疼痛、腫脹、感染などのリスクも伴います。
歯に機械的振動を加えることにより歯はより早く動くということで、AccleDentという製品が外国で販売されています。非侵襲的ですが、残念ながら研究では有意な効果は確認されていません。
磁場を利用する手法があり、静的磁場やパルス磁場を歯に加えて骨形成を増加させるという方法です。しかしながら臨床的根拠は限定的で、人体への影響は不明ということです。
低出力レーザーを照射することで骨のリモデリングを促進する方法があります。この方法は多くの臨床研究でも歯の加速は確認されています。しかしレーザーの波長、出力密度など標準化されたガイドラインは確立されていません。
そのほかに薬物(プロスタグランディン、副甲状腺ホルモン、ビタミンD類似体、モノクロナール抗体、成長ホルモン)や幹細胞ベースの治療など多方面からのアプローチが行われています。これからの科学の発展に期待が高まります。
令和7年9月のある日