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« 院長の一言...「矯正治療での歯の動きの研究」 | メイン

2025年9月24日

先月書きましたが、矯正治療の治療期間が長い理由は歯の動きが遅いことにあります。歯に矯正力を加えることで周囲の骨を吸収させたり、添加させたり(リモデリング)して歯を動かしますが、普通は一か月に1mm位しか動きません。早く歯を動かすことができれば治療期間も短くなります。そのための研究が幾つかあります。

一つは遺伝子治療です。骨のリモデリングでの骨形成因子や血管内皮増殖因子に遺伝子を導入します。動物実験では歯の移動が150%加速したという結果が報告されています。

つぎに外科的手法で皮質骨切開術、骨切除術、ピエゾ切開術などがあります。一時的に骨の代謝を増加させますが、疼痛、腫脹、感染などのリスクも伴います。

歯に機械的振動を加えることにより歯はより早く動くということで、AccleDentという製品が外国で販売されています。非侵襲的ですが、残念ながら研究では有意な効果は確認されていません。

磁場を利用する手法があり、静的磁場やパルス磁場を歯に加えて骨形成を増加させるという方法です。しかしながら臨床的根拠は限定的で、人体への影響は不明ということです。

低出力レーザーを照射することで骨のリモデリングを促進する方法があります。この方法は多くの臨床研究でも歯の加速は確認されています。しかしレーザーの波長、出力密度など標準化されたガイドラインは確立されていません。

そのほかに薬物(プロスタグランディン、副甲状腺ホルモン、ビタミンD類似体、モノクロナール抗体、成長ホルモン)や幹細胞ベースの治療など多方面からのアプローチが行われています。これからの科学の発展に期待が高まります。

令和7年9月のある日

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おびひろアート矯正歯科 院長 今井徹
おびひろアート矯正歯科
院長 今井徹

【所属学会】
日本歯科医師会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本臨床矯正歯科医会

【経歴】
1979年3月 北海道大学歯学部卒業
1983年3月 北海道大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)
1983年4月 北海道大学歯学部助手
1985年3月 北海道大学歯学部附属病院講師
1990年7月 日本矯正歯科学会認定医
1991年5月 文部省在外研究員としてアメリカ留学
1991年11月 北海道大学歯学部講師
1992年9月 日本矯正歯科学会指導医
1993年4月 北海道大学助教授
2000年8月 おびひろアート矯正歯科を開業
2006年11月 日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)